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本種の初採集の経緯を以下にご紹介します。 なお、本種はかなり後半になってから登場します。一部怖い表現がありますのでご注意願います。 仙台での学生時代、最初の2年間は市内の普通の下宿にいた。3年になってしばらくした頃、 突然大家が閉鎖する、と伝えてきた。閉鎖期限まで一週間ほどしかなかった。困っていた時、 同じ下宿の文学部の学生が、とても安いアパートを見つけたので、一緒に来ないか、と誘って くれた。有難い、と行くことに決めた。場所は青葉山の近くにあり、理学部の自分には徒歩で 通える好都合の場所だった。難点といえば、市街地からかなり離れた山中にあり、周囲には 民家が全くなかった。「鹿峰壮(かほうそう)」という名のアパートだった。家賃は当時(1977年) でもかなり安い月7千円だった。あわただしく荷物をまとめ、鹿峰壮に引っ越した。 安いだけにかなり老朽化が進んでいて、部屋の入口のドアは薄いベニヤ板のようなものだった。 先に住んでいた学生から嘘か真か色々と話を聞かされた。ある部屋で長い間インスタントラーメン ばかり食べて栄養失調で亡くなった女子学生の幽霊が時々出没する、といった怖い話もあった。 管理人の方は中年の女性で、二人の男の子がいた。とても気の強そうな方で、子供たちはよく叱られて いた。 ボロアパートではあったが、環境は抜群だった。自分の部屋は2階で真下を渓流が流れていた。 渓流の奥の雑木林から、時折ケーン、ケーンと雉の鳴き声が聞こえてきた。大学に向かう途中で、 雉の姿を間近に見たこともあった。とてもいい場所だな、と気に入っていた。そんな快適な生活も、 ある出来事によって吹き飛ばされてしまった。1978年6月12日、宮城県沖地震が発生した。 それ以来、大学へは毎日掃除に通うようなものだった。落ち込んでいたある日、ふと蝶でも採集 するか、と思い立った。 鹿峰壮から20分ほどの山道をブラブラ歩いていた。樹木に覆われた右側の小道の先で、何かが キラリと光った。すぐに蝶の翅だとわかり、近寄って採集した。本種だった。10頭以上は発生して いた。5頭のオスと1頭のメスを採集した。本当にここは素晴らしい場所だな、と暗い気持ちが つかのま晴れるようだった。 だが残念なことに、鹿峰壮に通じる細い道ががけ崩れで通行不能になり、汲み取り車がこれなく なってしまい、間もなく退去せざるを得なくなり、あわただしく荷物をまとめ、市内の普通の下宿に 引っ越すこととなった。(2019年4月記)