マイ昆虫記録館>鱗翅目>タテハチョウ科
鱗翅目(タテハチョウ科)へ戻る 鱗翅目へ戻る トップページへ戻る
本種はなじみ深い、好きな蝶の一頭だ。蝶の採集を始めて間もない 頃に採集できた。初めて出会ったとき、その紫色に妖しく光る表面の翅にしばらく見とれていた ことを思い出す。見る角度によってこれほど輝きが変化する蝶を採集したのは初めてのことで、 颯爽とした飛翔とともにいっぺんで気に入ってしまった。 数頭採集後、本種が普通種と分かってからは採集しなくなったが、2008年に一頭だけ 標本にしたことがある。といっても、生きている個体を採集した訳ではない。札幌の自宅 から定山渓手前の百松沢(ひゃくまつざわ)まで自転車でカミキリ採集に出かけた時のことだった。 渓谷に大きなコンクリート製の橋が架かっていた。広い歩道の上り坂を息を切らせながら通っていた。 汗がしたたり落ち、足元のペダルを見ることが多くなった。そのとき、灰色のコンクリート上に一頭の虫が 一瞬だけ視線に入った。翅の形から蝶か蛾だと思った。自転車を走らせている時、地面に 虫の姿を見ることはそれほど珍しいことではない。普段はそのまま通り過ぎるだけだ。だがこの時は 何かとても気になり、引き返して様子を見た。それは、翅を閉じたままじっとしている本種だった。 摘まみ上げてじっと見た。死んでいるのだが、体はまだ硬直しておらず、翅は全く傷んで いなかった。おそらく、飛翔中に車に衝突してショック死してしまったのだろう。三角紙に 包んで翅を広げてみた。内側も完全だった。標本にして残そうと決めた。自宅に戻り、 展翅後の本種をじっとみつめていると、昔の記憶がよみがえってきた。その妖しい光に 思わず「うわっ、すごい。」と口走ったことなどを思い出した。(2019年5月記)