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小学4年から蝶に興味を持ち始め、 天気の良い日曜などには近くの雑木林や小学校の校庭、はては墓地にまで採集に出かけた。 墓地にはお供えがあり、そこによくタテハチョウの仲間がやってきた。茨城県高萩(たかはぎ)市 という地方都市で父親の会社の社宅に住んでいた頃のことだ。 小学校は徒歩で20分程の高台にあり、途中の坂には数本のクヌギがあった。その中の一本の木には、 夏の間白い樹液が溢れていた。ある夏の昼下がり、晴天の蒸し暑い中、一人でこの木を訪れた。 すでにコムラサキなどの見慣れた蝶が樹液を吸っていた。すでに持っている蝶たちだったので、 ただ眺めていた。しばらくすると見たこともない蝶がやってきた。黒っぽい色彩で、他の蝶に比べて はるかに素早く飛び回っていた。黒っぽい翅には白い斑紋が散らばっていた。素早く飛び回っては止まる、 その行動を数回繰り返しているうちにチャンスがやってきた。樹液を吸ってじっとしているところに 網をかぶせ採集した。三角紙につつみ、じっと見た。黒っぽい色彩は、黒に近い光沢のある緑色だった。 そして何より印象的だったのはその口吻で、見たことのない真っ赤な色だった。鈍く光る黒緑色の翅には 他の明るい色彩の蝶とは違った高級感があった。帰宅後調べ、本種と分かった。 家内に蝶の標本写真を一通り見てもらい、どれが一番気に入ったかを聞いたことがあった。その時本種を 選んだ。宇宙に星が浮いているようで綺麗だ、と言っていた。そんな見方もあるのかな、と感心した。(2019年5月記)