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本種との初出会いはとても 印象的で、一生残るものだった。 今から50年ほど前、当時東京で高校生だった頃、都下の青梅市に住んでおり 近くの御岳山(みたけさん)まで蝶の採集を兼ねてよくハイキングに行った。 青梅線御岳駅で降りて御岳山までのコースは、景色もよく格好のハイキングコース で、訪れる人も多かった。この御岳駅より2駅青梅寄りに、軍畑(いくさばた)という駅があった。 この駅から山道を通って御岳駅に通じる少しハードなハイキングコースがあり、こちらは人の姿をみることはあまり無く、 急な上り下りが何か所もあり、大部分鬱蒼とした樹木に覆われていた。ある夏の日、この山道を蝶を求めて 歩いていた。たまには御岳山以外にも散策してみよう、といった気持だった。 汗を拭きながらゆっくりと上り坂を歩いている時だった。薄暗い山道の5,6メートル先に 青々と生い茂る茂みがあり、その一部が何か赤っぽく見えた。ゆっくりと近づき確認した。 それは図鑑でしか見たことのなかった紛れもない本種だった。驚きとうれしさで飛び上がりそうになった。 開いた翅は何か重たそうで、濃い深緑の中の少し黒みを帯びた紅い斑紋がとてつもなく美しかった。南方系の種で、 いつか採集したいと願っていたが、ここで出会えるとは夢にも思わなかった。 何かの本で、「アサギマダラは、採り逃がすとはるか空の上高く舞い上がり、見失ってしまう。」 と記載されていたのを思い出し、そっと近づいて補虫網を下の方に持っていき、「頼む、 逃げないでくれ。」と念じながら思い切り網を振り上げた。その後の御岳駅までの記憶は全くない。 うれしい、という思いだけで、他の記憶はすべて吹き飛んでしまっていた。(2019年6月記)