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本種は金緑色の翅と赤いマフラーに彩られた北海道特産のとても 美しいカミキリムシで、これまでに一度だけ出会うことができた。 その日は予約していたキャンプ場(ほたるの里)で家族と一泊する日だった。 「ほたるの里」は車で札幌から北に2時間ほどの所にあった。天気も良く、快適なドライブ だった。午後3時頃到着し、コテージに荷物を運び、早速バーベキューの準備に取り掛かった。 まわりは緑豊かな山林で、すぐ近くの5メートル程下に樹木に覆われた小川が流れていた。 運転で疲れていたのですぐに採集に出かける気にはならなかった。缶ビールを飲みながら、 家族がバーベキューの準備をするのを見ていた。夜間採集でカミキリムシや蛾を狙おうと 思っていた。 缶ビールを飲み干し、近くの小川の様子を見に行くことにした。川べりは樹木に覆われて薄暗かった。 柳が多くあり、そのうちの一本の太い幹には虫が脱出したような穴が沢山開いていた。 「カミキリかな?」と思い、脱出口の辺りをしばらく眺めていたが何もいなかった。そこから 少し右に視線を移した時だった。1メートル程先の生い茂った葉のちょうど目の高さの所に、やや大きめの 触角の長い虫が止まっていた。薄暗い中で首のあたりが異様に赤く見えた。翅は黒っぽい緑色で、鈍く光って いた。「ジャコウカミキリだ!」と内心叫んだ。以前から図鑑で何度も目にしており、是非採集したい虫だった。 ゆっくりと近づき、手のひらを上下におにぎりを作る時のように丸めて、すっぽりと囲み、急いでコテージに 戻った。何事かと見つめる妻と二人の子供、母に、「珍しい虫を捕まえた。とても綺麗な虫だ。」と興奮して 話しかけた。両手がふさがっていてどうやって毒ビンに入れたか記憶がない。とにかく 毒ビンに入れ、じっくりと観察した。本当に綺麗なカミキリムシだな、と感激した。50歳を過ぎた大人が子供のように 無邪気になれた時間だった。 その後、生息していそうな石狩川河川敷で採集を試みたものの、不発だった。それだけにこの一頭がとても 貴重なものに思える。標本箱のガラス越しに見るたびに、あの時の感激がよみがえってくる。(2008年4月記)