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本種は2センチほどの地味なコメツキムシ だが、今回の出会いは妙に記憶に残るものとなった。以下、「ある男の人生回顧」という題名の 物語を書いてみた。興味のない方は上の「回想録表示無し」のボタンをクリック願います。 札幌に住むその男は、6年前に体調を崩して退職して以来、貯金を取り崩し家族の 世話になりながら求職活動を繰り返してきた。だが、50も半ばを過ぎた気の弱そうな おやじには世の中は厳しく、何度も履歴書を書き、ハローワークに通い、新聞や雑誌の求人募集に 応募しても採用されることは無かった。ある初夏のとても暑い日だった。彼は この日もハローワークに出向いた。バス停からハローワークまで20分ほど歩き、紹介状を 受け取った後、気分転換にすすきのまで歩くことにした。下を向いて汗をふきながら歩いていると、途中 南3西10あたりで路上に転がっている小さな虫の死骸が目に入った。やや大きめの コメツキムシで、硬くなっていなかったので持ち帰り標本にすることにした。彼は昆虫採集が 趣味だった。ティッシュにくるみカバンに大切にしまいこんだ。そのとき、こんな とりとめの無い考えが浮かんできた。「こいつは、死ぬ間際にどんな気持ちだったのかな。 仰向けになり、足をばたつかせて、必死に生きようとしたに違いない。だが、いよいよ最後の 時が来たと分かると、明るい太陽の下、自由に飛び回り、楽しく過ごした過去を思い出し、 天寿を全うすることに感謝し、そのままジッとして死を迎えたに違いない。今の俺はどうか。 生きようとして、足をバタバタ動かして必死に職を探し、何とかこの状況を切り抜けようともがいて いる。だが、その一方で、これまでの楽しかった思い出にすがりつき、まあまあ満足できる 人生だったな、悔いは無いかな、と思っている。こいつと同じだな。」 帰宅後本種と分かり綺麗に整形した。その後その標本を見るたびに親近感を覚えた。(2010年10月記)