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全て同一個体
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2010年7月、長い間憧れていた本種を 採集することができた。少々長くなりますがその時の状況を紹介します。 7月4日、少し雲の多い日だった。11時頃、自宅近くの林道に採集を兼ねた散策に 出かけた。20分ほど歩いたところの左手に、幅20メートル、奥行10メートルほどの小さな 菜園があった。歩いている林道とほぼ直角に別の細い林道が左手にあり、他は 鬱蒼と樹木が並んでいた。以前ここで所有者の方と立ち話をしたことがあった。人当たりの 良い方で、定年退職されて体を使う趣味として畑仕事を選んだ、とのことだった。林と畑の 境目に倒木が何本も転がっていた。ハルニレのようだった。「昆虫採集が趣味なので、倒木 の辺りを調査させてもらっていいですか。」と尋ねた。「ああ、いいですよ。」と快く了解してくださった。 この時には何も採集できなかった。今回もその方は畑仕事に熱中していた。了解を得て調査を始めた。 エグリトラカミキリやシロトラカミキリが目に付いた程度で、採集することもなくゆっくり最後の調査 をした時だった。比較的新しい倒木に金緑色の小さな虫を見つけた。すぐに本種と分かった。 図鑑で馴染みの虫で、記憶に焼き付いていた。採集後、うれしさのあまり少し離れた所有者の方に 駆け寄り、「珍しい虫をつかまえましたよ。キンヘリタマムシという虫です。長いこと欲しかった虫です。」 といったことを早口で話しかけた。「え、何という虫ですか。良かったですね。」とその方は少し驚いた様子で 祝福してくれた。「今日はもう満足なので帰ります。」と私。「失礼します。」と別れを告げた。 この時は、この最初の出会いがほんの序章に過ぎないとは夢にも思わず、もうこんな幸運に恵まれる ことは無いだろうな、と満足しながら帰宅した。 7月16日、晴天でとても暑い日だった。10時半に家を出て例の菜園に向かった。所有者の方は不在だった。 菜園の少し下の方の倒木を調べて数分後に本種を発見した。だがこの個体は採集直前に逃げられた。 すぐに別の個体が現れ、これにも逃げられた。そして、少し不思議な気がした。前に採集した時は 一頭だけ目撃して運よく採集できた。だが、今日は時間をおかず2頭目撃した。もしかしたら 大量発生しているのでは、と嬉しくなり、倒木が多数おかれている場所に向かった。どの倒木も新鮮なもの だった。葉はあまり枯れておらず、緑色が残っていた。倒木に近づいて、「あっ!。」と驚いた。 多数の本種がそこら中にいた。倒木のみならず、飛翔しているもの、近くの林の葉上にいるものなど、いたるところに 金緑色が輝いていた。採集もせず、ただ茫然と眺めていた。しばらくして落ち着き、4頭だけ 採集した。倒木はいつ処分されるか分からず、こんなチャンスはまたとないのだから、採れるだけ 採ろうかとも思ったが、前のと併せて5頭も採ればまあいいか、とその後は見るだけにした。 7月31日、今回はもうさすがにいないだろう、と例の菜園に向かった。この日も晴天でとても暑い日だった。 今回も所有者の方はおらず、ゆっくり見回った。さすがに前回ほど発生していなかったが、それでも10頭以上は 見ることができた。こんなチャンスは二度と無いだろう、との思いが強くなり、5頭採集した。 その後数回訪れ、一度だけ2頭がすばしこく倒木上を動き回る場面に出会ったのみだった。その後 ハルニレの倒木はきれいに片づけられた。来年は本種を見ることが無いだろうな、と一抹の寂しさを感じた。 (2010年10月記)